医療薬学

SDMって何?●●療養指導士の資格を目指すなら知っておきたい。

こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。

このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。

ふぁるくま
ふぁるくま

今回は「SDM(Shared decision making:共同意思決定)」という医療用語について考えてみました。地域糖尿病療養指導士、腎臓病療養指導士、について勉強する過程でこの単語を聞き、興味深い概念だなと捉えています。

本記事では「SDM(共同意思決定)」をテーマに、SDMと療養行動の関係について考えていきます。本記事は、以下のような方を対象に作成しました。

  • インフォームド・コンセント(IC)は知っているがSDMは知らないという方
  • 療養指導士の資格に興味がある方

※8分で読めますので、最後までご覧ください。

1.SDMってなに?

1-1.SDMとは

医療者と患者が、医療情報だけでなく患者の生活背景や価値観(人生観や健康観)を共有し、その上で治療方針を決めていく。話し合い、医療者と患者が意思決定するプロセスをSDM(共同意思決定)と言います。1)

SDMとは、「質の高い医療決断を進めるために、最善のエビデンスと患者の価値観、好みとを統合させるための医療者と患者間の協働のコミュニケーション・プロセス(SpatzES. JAMA, 2016)」「患者と医師が情報、直感だけでなく決定を下すことも共有する協働的な努力・企て(Whitney SN. Ann Intern Med, 2003)」「医療者と患者が協働して医療上の決定を下すプロセス(Legare F. Patient Education and Counseling, 2014)」と、各論文に記載されている通り、医学的な情報や最善のエビデンスと、患者の生活背景や価値観など、医療者と患者が、双方の情報を共有しながら、一緒に意思を決定していくプロセスです。

1)腎臓病SDM推進協会, Shared Decision Making (SDM)とは.https://www.ckdsdm.jp/sdm/sdm.html.

共同で意志決定することで患者さんの治療方針決定への参加が進み、患者さんにとってより良い生き方につながる。具体的にはセルフマネジメント力が向上し、治療成績の向上やQOLの向上につながるという考え方です

1-2.ICとの違い

患者の意思決定モデルは、パターナリズム(父権主義モデル)からインフォームド・コンセント(説明と同意)へと変化してきました。最近では、医療者が情報を患者に提供し、医療者と患者がコミュニケーションをとり一緒に決めていくSDMへと移行してきていると言われています。2)

この3つの違いは、情報量(種類や方向性)と意思決定者です。インフォームド・コンセントとSDMは似ていますが、インフォームド・コンセントでは医療者が最良と考える方法を提示し、「患者の同意」が最終到達点となります。一方、SDMでは患者さんと医療者が解決策を協力して見つけ出そうとするものです。その点が大きな違いです。

パターナリズムSDMインフォームド・コンセント
情報の方向一方向
(医師⇒患者)
医師⇔患者医師⇒患者
情報の内容医学情報医学情報
個人・社会情報
価値観・生活
医学情報
情報量必要最小限全関連情報
(医学・個人・社会)
全関連情報
(医学・個人・社会)
検討者医師のみ医師と患者(家族他)患者(家族他)
最終決定医師医師と患者患者
1)腎臓病SDM推進協会, Shared Decision Making (SDM)とは.https://www.ckdsdm.jp/sdm/sdm.html.
こくま
こくま

んー、ちょっとよく分かんないな。

ふぁるくま
ふぁるくま

例えば、患者さんに「禁煙してください。」「減塩してください。1日6g以下です。」「運動してください。有酸素運動を週あたり150分以上です。」と伝えて、すべてを実行できそうかな?

こくま
こくま

仕事もあるし、食生活が大きく変わるし。。。

ふぁるくま
ふぁるくま

そうなんだよ!だから、患者さんの生活背景や価値観を考慮して、何をどれだけできるかを一緒に考え、一緒に悩み、一緒に決めていく。共同で解決策を模索する必要があるんだ。それが実行可能性を高めるんだ

2.療養指導とどう関係する?

2-1.療養行動は生活そのもの

糖尿病や慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)の治療には、服薬だけでなく食事内容を含めた生活習慣の適正化が大切です。つまり、患者さんが正しい知識を持ち、適切な療養行動に結びつけるように支援することが、医療者には求められます。具体的にはセルフマネジメント(血圧測定、体重測定、服薬管理、感染予防、禁煙、飲酒など)ができるように促していくことが目標です。2)

セルフマネジメントとは、予防的および治療的な患者のセルフケア活動とされており、患者が行動変容に必要な新しい知識を得ながら、自分自身の生活と折り合いをつけて日常生活範囲で対処してくことである。

日本腎臓病協会, 腎臓病療養指導士のためのCKD指導ガイドブック. 東京医学社, 2021.

2-2.理想の患者像を押し付けない

セルフマネジメントの正しい知識を提供したのに実行してくれない。そのように考じる時があるかもしれません。ただ、患者さんは食事療法、運動療法、指示通りの服薬など、療養しながら社会での生活を維持していく必要があります。医療者が最適と思う治療が目の前の患者さんに最適とは限らないことを知る必要があります。

ことわざで「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」というものがあります。最終的にそれを実行するかを決めるのは本人であり、周りの人は強制することができないし、支援することしかできない。医療者の役割は、セルフマネジメントできるように支援することです。理想の患者像を強制するのではなく、一緒に考え、解決していく姿勢が必要ではないでしょうか。

3.腎臓病療養指導士の役割が療養指導

日本腎臓病協会が認定する腎臓病療養指導士の役割を記載します。腎臓病療養指導士は療養指導の役割が求められ、療養指導を行うためにはSDMの概念を理解する必要があると思います。

患者本人の望むこと、大切に思っている価値観、気持ちの変化を理解し、一緒に解決策を模索する。そのような支援が、QOLの維持・向上と同時にCKDの治療目的を達成することに繋がるのではないでしょうか。

1. CKDの意義、CKDに関する基本的な知識と対策、およびCKDの予防について 理解・習熟している

2. ステージに応じた保存期CKD患者への基本的管理方法を理解し、個別のCKD患者に対してステージに応じた包括的かつ基本的な療養指導(生活指導,栄養指導,薬物指導)を行うことができる

3. CKDに関して腎臓専門医や他の医療従事者と円滑な連携がとれ、チーム医療に参加することができる

4. 腎代替療法についての基本的知識を有し、3つの療法選択(血液透析,腹膜透析,腎移植)に関する説明を行うことができる

5. AKIの基本的知識を持ち、その予防策について指導することができる

6. 自らの指導技術を高める活動を継続する

7. 後進の指導を行い、腎臓病療養指導士の育成に努める

8. CKDの啓発活動に努める

9. 地域の行政機構、医師会などと連携してCKD 対策を推進する

10. 腎臓病療養指導活動の普及に努める

11. CKDの臨床研究への参加に努める

日本腎臓病協会(https://j-ka.or.jp/educator/)より引用

「腎臓病療養指導士について知りたい」という方は、以下の記事をご覧ください。

まとめ

いかがでしょうか。

薬局薬剤師と療養指導は親和性があるのではと感じます。今回の記事でSDMという概念に対する理解が深まったのであれば嬉しく思います。

参考文献

1)腎臓病SDM推進協会, Shared Decision Making (SDM)とは. https://www.ckdsdm.jp/sdm/sdm.html.
2)日本腎臓病協会, 腎臓病療養指導士のためのCKD指導ガイドブック. 東京医学社, 2021.

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