07_腎尿路生殖器系医療薬学

DKD、CKD、糖尿病性腎症、違いは?

こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。

このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。

ふぁるくま
ふぁるくま

今回は「DKD、CKD、糖尿病性腎症」についてまとめました。特にCKDとDKDの違い、糖尿病性腎症とDKDの違いについては、腎臓病薬物療法の勉強を始めた当初に混同してつまづいた経験があります。

本記事は、以下のような方を対象に作成しました。

  • 腎臓に関する勉強を始めたばかりの薬剤師
  • 糖尿病に関する勉強を始めたばかりの薬剤師

はじめに

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease;CKD)は腎障害や腎機能の低下が持続する疾患です。CKDが進行するとCKDステージ5に該当する末期腎不全(End-stage Kidney Disease; ESKD)に至り、透析療法や腎移植術が必要となります。

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018によると、わが国の慢性透析患者数は2016年末で約33万人と増加し続けており、透析導入疾患の第1位は糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy;DN)とされています。

近年、上記の糖尿病性腎症を含む大きな概念として、糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Diseases;DKD)という新たな概念が提唱されました

今回は、DNとDKDの違いについて調べた内容をまとめます。

1.糖尿病性腎症(DN)とは

糖尿病性腎症は、高血糖状態による血管変化により糸球体構造が破壊され、腎機能が低下してくる病態です。15~20年かけて末期腎不全となることが多いですが、血糖・血圧・たんぱく尿・脂質などの適切な管理を行えばそれを延長または防止することも可能とされています。

典型的(古典的)な糖尿病性腎症の臨床経過は、糖尿病発症後比較的早期から糸球体過剰濾過が生じ、5~10 年の経過で微量アルブミン尿が出現します。その後、顕性アルブミン尿のレベルまでアルブミン尿が増加すると、急速に GFR が低下して最終的に末期腎不全に至ります(下図)。

糖尿病性腎症はもともと、糖尿病により腎症になった患者の腎生検所見から糖尿病性糸球体硬化症という組織学的特徴を有する腎疾患に対する病名でした。しかし、すべての患者に腎生検は困難なため、前述のような臨床経過と組織学的特徴・典型的な臨床所見を伴い、他の腎疾患が強く疑われない場合に糖尿病性腎症と診断されるようになりました。

2.糖尿病性腎臓病(DKD)とは

2-1糖尿病性腎臓病の臨床経過は?

しかし近年、顕性アルブミン尿を伴わないでGFRが低下してくる非典型的な糖尿病性腎症が、看過できない数を占めることが明らかにされてきました。そこで、非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念として、DKDという病名が2013年ごろより使用されるようになりました。

背景に、顕性アルブミン尿の2型糖尿病患者においてレニン–アンジオテンシン系(RAS)阻害薬による治療が末期腎不全進展予防に有用である報告がされ、早期からRAS阻害薬の投与が普及したために、顕性アルブミン尿の増加を認めないまま腎機能が低下する症例が多くなったことがあります。

糖尿病性腎症は典型的な微量アルブミン尿~顕性アルブミン尿を経てGFRが低下する場合を指しますが、糖尿病性腎臓病は加齢や高血圧による動脈硬化や脂質異常症の関与などのため、顕性アルブミン尿を伴わないでGFRが低下する糖尿病患者を含むものを指し、糖尿病の病態が関与するCKD全般を包括した概念となります(下図)。

また、さらに大きな概念である糖尿病合併CKDは、糖尿病患者がIgA腎症やPKD(多発性嚢胞腎)などの糖尿病と直接関連しない腎疾患を合併した場合を含みます。

2-2.糖尿病性腎臓病の治療方針は?

糖尿病患者の生命予後の改善やQOLの維持には、糖尿病性腎症を含む血管合併症の発症・進行を抑制することが重要です。血管合併症の発症には高血糖以外にも、肥満、高血圧、血清脂質異常、喫煙などが共通の危険因子として関与しています。エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018によると、単一の危険因子のみを厳格に管理するよりも、これら危険因子を包括的に管理する集約的治療が推奨されています

具体的には、血管合併症の発症・進行と総死亡率の抑制のために、生活習慣の修正(適切な体重管理[BMI 22]、運動、禁煙、塩分制限食など)と糖尿病診療ガイドラインで推奨されている血糖(HbA1c 7.0%未満)、血圧(130 mmHg/80 mmHg未満)、脂質(LDLコレステロール120 mg/dL、HDLコレステロール40 mg/dL、中性脂肪150 mg/dL未満)の管理目標値を目指す多因子介入です。

まとめ

今回は以下の書籍を参考にまとめました。

この書籍を読み、「なぜDKDという概念が生まれたのか」という疑問が解消されました。アルブミン尿が出ずとも集約的な治療を進め、適切に管理しないと血管合併症の発症・進行抑制および生命予後の改善ができませんよ、ということと解釈しています。本記事が日常業務の参考になれば嬉しく思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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