こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。
このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。
今回は「添加物にクレアチニンが含まれる薬剤」について調べました。
本記事は、以下のような方を対象に作成しました。
- 腎臓に関して勉強中の薬剤師
はじめに
ちょっと待って。クレアチニンって筋肉の代謝産物、内因性の物質だって聞いてたけど薬剤に含まれるの?!
そうなんだよ!私も聞いた時は驚いた。勉強会で腎臓専門医の方がお話しされていて、とても印象的だったので自分なりに色々と調べてみたんだよ。
クレアチニンは腎機能の指標として活用され、CKDの重症度分類や薬物の投与設計などに用いられます。ただ、クレアチニンの値は筋肉量に依存するため筋肉量が少ない女性、高齢者、四肢切断者、長期臥床中の患者では低値となり、尿細管分泌されるため尿細管分泌を阻害する薬剤を服用されている場合には上昇がみられることがあります。
今回は変動要因の一つになりうるものとして、添加物にクレアチニンが含まれる薬剤について調べてみました。クレアチニンの基本情報や変動要因について知りたい方は、以下の記事を参照してください。
添加物にクレアチニンが含まれる薬剤は?
勉強会で拝聴した内容は「デカドロン注射液」に含まれる、でした。
添加物にクレアチニンが含まれる薬剤をPMDAの医療用医薬品情報検索を用いて調べました。具体的には「組成」の項目に「クレアチニン」を記載して検索したところ、以下の薬品が該当しました。1)
薬品名 | 含有クレアチニン量 |
---|---|
アザセトロン塩酸塩静注液10mg「タイヨー」 | 37.5mg |
デカドロン注射液®1.65mg/3.3mg/6.6mg | 4mg/8mg/16mg |
水溶性ハイドロコートン注射液100mg/500mg | 16mg/80mg |
ただし、デカドロン錠やデカドロンエリキシルにはクレアチニンは含まれていませんでした。
そもそもなんでクレアチニンが含まれるの?
日本医薬品添加剤協会の医薬品添加物の安全性データベースで調べると、用途として「安定(化)剤、緩衝剤、無痛化剤」と記載されています。2)
ただ、なぜ「安定(化)剤、緩衝剤、無痛化剤」となるのかは、調べが足りず分かりませんでした。
血清クレアチニン値への影響は?
薬剤にクレアチニンが含まれるということは、投与により血清クレアチニン値が上昇し、見かけ上は腎障害と判断してしまうような気がするんだけど、報告はあるの?
調べてみたところ、2例報告があったんだ。
牧石らの報告によると、関節リウマチ患者にデカドロン®注射液3.3mg製剤約0.2mLを手関節腔に注射直後に同側静脈で採血したところ、3カ月前は正常だった血清クレアチニン値が4.66mg/dLまで上昇した。しかし、腎機能の指標であるBUNの上昇は見られず、ASTやCKなどの筋逸脱酵素の上昇も見られなかった。採血から3日後、別医療機関で再度血液検査を施行したところ、血清クレアチニン値は以前と同等まで改善していた。3)
Nakajimaらの報告によると、重度の喘息発作で入院した患者にデキサメタゾンを静脈内投与したところ翌日の血液検査で血清クレアチニン値が4.63mg/dLまで上昇した(入院時は0.75mg/dL)。本症例では止血帯をかけた状態で患者の左立方静脈から採血されていたため、1時間後に患者の右腕から再度採血したところ、血清クレアチニン値は正常であった。4)
いずれもデカドロンを投与している腕で採血している、という点が重要な気がします(一時的・限局的な影響の可能性があるという意味で)。ただ反対の腕で採血した場合にどうなるかは調べても分かりませんでした。
どの程度の影響が出るかは分かりませんが、外因性のクレアチニンが血清クレアチニン値に影響した報告があることを留意しておくと良いと思います。
まとめ
いかがでしょうか。
血清クレアチニン値はCKDの重症度分類、AKIの鑑別、薬物投与設計などに用いるため変動要因を把握しておくことは重要です。今回の記事が日常業務の役に立てばうれしく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
1)医薬品医療機器総合機構ホームページ, 医療用医薬品 情報検索. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
2)日本医薬品添加剤協会, 医薬品添加物の安全性データベース. http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/data.html
3)牧石ら, デカドロン®注射液の手関節内注射直後の同側肘静脈採血検査で血清クレアチニン値の上昇を認めた 1 例. 日腎会誌 2011;53(2):200-206.
4)Minami Nakajima et al., Pseudo–Acute Kidney Injury Secondary to Intravenous Dexamethasone. AJKD 2015;65(2):342-347.
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