こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。
このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。
今回は「クレアチニン、BUNが高いってどういうこと?」という疑問についてまとめました。
本記事は、以下のような方を対象に作成しました。
- 腎臓に関する勉強を始めたばかりの薬剤師
- 検査値に基づく投与設計を勉強中の方
はじめに
薬剤師による腎機能を考慮した薬物投与設計は不可欠であり、役割として求められていることは言うまでもありません。抗凝固薬を過量投与した場合は出血性の合併症のリスクですし、抗がん薬を過量投与した場合も副作用リスクが高まります。腎機能を正しく評価し、適切に投与設計する知識を身に着けておきたいものです。
薬剤の投与設計にはCG式(Cockcroft-Gault 式)による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や日本腎臓学会が作成した日本人のGFR推算式によるeGFR(推算糸球体濾過量:estimated glemerular filtration rate)が用いられています。
今回は、腎機能評価の指標であるBUN、クレアチニンについて調べた内容をまとめます。
1.BUN
1-1.BUNとは
BUN(blood urea nitrogen)は血清尿素窒素です。その名の通り、血液中の尿素に含まれる窒素量を測定したものです。
たんぱく質が代謝されると尿素となって腎臓から排泄されます。この血液中の尿素に含まれる窒素量がBUNですので、BUNは体内のたんぱく質の代謝産物です。
1-2.高いとはどういうこと?
日本臨床検査標準協議会の「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲―解説と利用の手引き―」によると、基準値は8~20mg/dLです(施設により異なる可能性があります)。
糸球体濾過量が低下(=腎機能が低下)すると排出しきれない尿素が体内に蓄積し、血液中の尿素窒素であるBUNは高値を示します。ただし、糸球体で濾過された後に尿細管で再吸収され、なおかつ尿細管での影響がクレアチニンに比較して大きいなどの理由から、腎機能評価にはクレアチニンが適していると言われています。
1-3.変動する要因
BUNの値は、食事として摂取したたんぱく質の量など腎機能以外の要因の影響を受けるため評価には注意を要します。腎機能以外の要因(腎外性因子)を以下にまとめます。
高値を示す腎外性因子
循環血液量の減少(下痢、嘔吐、脱水、心不全、利尿薬など)、尿素窒素産生の亢進(高たんぱく食、消化管出血(血液由来のたんぱく質が吸収される)など)、異化亢進(火傷、重症感染症、がん、高熱、副腎皮質ステロイド投与など)
低値を示す腎外性因子
妊娠、多尿、低たんぱく食、重症肝不全など
つまり、BUNが上昇したから腎機能低下とは判断せず、実臨床では他の検査値異常(Creなど)と患者背景(全身状態など)を整理した上で評価します。
2.クレアチニン(Cre)
2-1.Creとは
Creは主に筋肉で生成される代謝産物であり、生成量は筋肉量に依存します。クレアチンリン酸という骨格筋にとって重要なエネルギー貯蔵物質が代謝されることでCreが生成されます。
健康成人の体内クレアチニン量は100~120gであり、1%が代謝される。つまり、約1gがクレアチニンとして尿中に排泄されている。
2-2.高いとはどういうこと?
日本臨床検査標準協議会の「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲―解説と利用の手引き―」によると、基準値は男性:0.65~1.07mg/dL、女性:0.46~0.79mg/dLです(施設により異なる可能性があります)。
Creは糸球体で濾過され、尿細管から再吸収されることなく尿中に排出されることから腎機能を評価する指標として用いられます。Creでそのまま腎機能を評価するのではなく、日本腎臓学会が作成した日本人のGFR推算式によるeGFR(推算糸球体濾過量:estimated glemerular filtration rate)で算出された値で評価します。
日本人のGFR推算式(標準化eGFR)
eGFR=194 X Cr-1.094 X 年齢(歳)-0.287 X 0.739(女性の場合)
2-3.変動する要因
Creの値は筋肉量に依存するため筋肉量が少ない女性、高齢者、四肢切断者、長期臥床中の患者では低値となります。またCreは尿細管分泌されるため尿細管分泌を阻害する薬剤を服用されている場合には上昇がみられることがあります。
高値を示す腎外性因子
循環血液量の減少(下痢、嘔吐、脱水、心不全、利尿薬など)、産生の亢進(横紋筋融解症、大量の肉摂取など)、尿細管分泌の抑制(シメチジンなど)
低値を示す腎外性因子
筋肉量の減少(長期臥床中など)、多尿など
特に筋肉量に依存するためつまり、BUNが上昇したから腎機能低下とは断定実臨床では他の検査値異常(Creなど)と患者背景(全身状態など)を整理して評価します。
まとめ
今回は以下の書籍を参考にまとめました。
BUNやCreを日常業務で活用されていると思いますが、何を測定しているか理解し、どのような変動要因があるかを把握することで腎機能を適切に評価できると感じます。ぜひ日常業務にお役立ていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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