こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。
このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。
今回は「標準化eGFRと個別化eGFRの違い」についてまとめました。腎臓薬物療法の勉強を始めた当初、混同してつまづいた経験があります。
本記事は、以下のような方を対象に作成しました。
- 腎臓に関する勉強を始めたばかりの薬剤師
- 検査値に基づく投与設計を勉強中の方
はじめに
薬剤師による腎機能を考慮した薬物投与設計は不可欠であり、役割として求められていることは言うまでもありません。抗凝固薬を過量投与した場合は出血性の合併症のリスクですし、抗がん薬を過量投与した場合も副作用リスクが高まります。腎機能を正しく評価し、適切に投与設計する知識を身に着けておきたいものです。
薬剤の投与設計にはCG式(Cockcroft-Gault 式)による推算クレアチニンクリアランス(CCr)や日本腎臓学会が作成した日本人のGFR推算式によるeGFR(推算糸球体濾過量:estimated glemerular filtration rate)が用いられています。
このeGFRは、CKDの重症度分類に用いる標準化eGFR(mL/min/1.73m2)と、薬物投与設計に用いる個別化eGFR(mL/min)が存在します。また、標準化eGFRを補正eGFRと呼び(「標準体表面積で補正した」という意味)、個別化eGFRを未補正eGFRと呼ぶこともありますが、誤解を招きやすい表現(「薬物投与設計のために体表面積で補正した」と混同しやすい)ですので使用されないほうが良いと思います。
今回は、標準化eGFRと個別化eGFRの違いについて調べた内容をまとめます。
1.eGFRとは
1-1.GFRは糸球体の濾過量
腎臓には1日あたり約1,500Lの血液が流れ込みます。この血液は糸球体を通過(濾過)し、約150L/日の原尿が生成されます。その後、99%の水分や栄養素が再吸収(濃縮)され、最終的に約1.5L/日が尿として排泄されます(下図参照)。
この過程で、単位時間あたりに糸球体が血液を濾過する量を糸球体濾過量(GFR)と呼び、腎臓が処理可能な血液量を表わすため、腎機能評価の指標とされます。
1-2.eGFRは推算式で算出された値
腎機能を最も正確に測定する方法は、イヌリンを用いてGFRを実測する方法です。これは外来性物質であり、糸球体で100%濾過され、尿細管分泌や尿細管再吸収もされませんので、腎機能評価のGold Standard とされています。ただ検査が煩雑なため、代替指標として簡便なクレアチニンを用いてGFRを推算する方法が用いられます(eは推算(estimated)を意味します)。
腎機能を評価する指標として、CG式によるCCrや日本人のGFR推算式によるeGFRが用いられます。計算式は以下の通りです。
Cockcroft & Gault の式
男性:eCCr(mL/min)=(140 – 年齢(歳) ) x 体重(Kg) / (72 x Cr )
女性:eCCr(mL/min)=0.85 x 男性の値
日本人のGFR推算式(標準化eGFR)
eGFR(mL/min/1.73m2)=194 X Cr-1.094 X 年齢(歳)-0.287 X 0.739(女性の場合)
日本人のGFR推算式(個別化eGFR)
eGFR(mL/min)=標準化eGFR×(体表面積/1.73)
2.標準化eGFRとは
標準化eGFR(mL/min)は、患者が体表面積1.73m2という平均的な体格の日本人だったと仮定した場合の腎機能を示しています。これは、体格によって数値が左右されるからです。
先程の個別化eGFRの推算式を以下に示します。体表面積に注目していただくと、体表面積が大きければ算出される値が大きくなり、体表面積が小さければ算出される値が小さくなることが分かります。
日本人のGFR推算式(個別化eGFR)
eGFR(mL/min)=標準化eGFR×(体表面積/1.73)
体格(身長・体重)で数値が左右されるため、腎臓が本当に悪いかどうかを判断できません。そこで、標準的な体格に当てはめて(標準化)、体格の影響を小さくすることで、患者間の比較することが可能としたのが標準化eGFRを用いる目的です。
このような理由から、CKDの重症度分類には標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を用い、薬物投与設計には個別化eGFR(mL/min)を用います。検査値を確認する場合や他者と会話する時には、どちらのeGFRを示しているかを確認し、齟齬が生じないように注意しましょう。
まとめ
今回は以下の書籍を参考にまとめました。
当初、個別化eGFRと標準化eGFRを混同してつまづいた経験があります。本記事が同様の経験がある方の参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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