こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。
このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。
初めて新人薬剤師の教育係を任命されました。目標ってどうすれば良いか分かりません・・・
本記事では【後輩指導】をテーマに、後輩指導のノウハウをご紹介します。
わたしは管理薬剤師として数多くの新入社員とその教育係(指導役)を見てきました。初めて教育係を担当する場合、「どうやって目標設定すればいいの?」と悩まれる方が多いように感じます。
まず、本記事では「目標設定のフレームワークってなに?」と題して“目標設定に重要な要素”をご紹介いたします。
以下のような方を対象に作成しております。
- 新人薬剤師の教育係を初めて任命された。
- 後輩指導の経験が少ないため、目標設定の方法を知りたい。
また初めて教育係を担当する方の心構えを知りたい方はこちらをどうぞ。
目標設定の手順はこちらの記事をご参照ください。
※6分で読めますので、最後までご覧ください。
SMARTの法則とは
効果的に目標設定するためのフレームワークとして「SMARTの法則」というものがあります。これは1981年にジョージ・T・ドランが提唱した概念で、目標の重要性と効果的な目標設定方法として用いられます。1)具体的には以下の5つの要素から構成され、目標設定に取り入れることが大切とされます。
- S:Specific(具体的に)
- M:Measurable(測定可能な)
- A:Achievable(達成可能な)
- R:Related(経営目標に関連した)
- T:Time-bound(時間制約がある)
似たような表現ですと「定性的・定量的に評価する」や「(到達目標に対する)期限設定」が該当します。目標は抽象的な表現になりやすいので、可能な限りこのSMARTの法則に沿った目標設定が大切です。
んー、ちょっとよく分かんないな。
今回は、各要素を薬局薬剤師向けに置き換えて考えてみるよ。
S:Specific(具体的に)
Sは具体的であることです。シンプルで分かりやすい指標であると考えてください。例えば「服薬指導を頑張ります」という目標は、何をどのように頑張るのか具体性に欠けています。服薬指導の件数、患者満足度の向上、インテリジェントフィーの算定件数、で目標の意味が変わります。さらに、顧客満足をさらに掘り下げると、顧客対応という視点と薬学知識という視点で意味が変わります。
具体的という要素を取り入れた「服薬指導」の目標を考えてみましょう。
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば服薬指導ができる
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば1日に●件の服薬指導ができる
- 患者さんに「ありがとう」と言われる
- 患者の生活像を聞き取り、必要な薬学的介入ができる
「服薬指導を頑張る」よりは具体的になったと感じるのではないでしょうか。このように「具体的には何?」と考えてブレイクダウンしていくことで具体化することができます。
M:Measurable(測定可能な)
Mは測定可能であることです。目標には、数値を取り入れる必要があります。すべてを数値で評価することは難しいと思いますが、数値で示さなければ目標に達したかどうかが判断できません。数値、パーセンテージの変化など定量的に評価できる指標を取り入れ、可能な限り数値で評価するようにしましょう。
先ほどの服薬指導の例に、「定量的」という要素を加えてみます。
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば服薬指導ができる(●月●日に開始し、1週間後には1日に●件ができるようになっている)
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば1日に●件の服薬指導ができる(月あたり●件)
- 患者さんに「ありがとう」と言われる(月あたり●件)
- 患者の生活像を聞き取り、必要な薬学的介入ができる(介入率●%、処方変更率●%)
いかがでしょうか。より定量的で具体的な目標になったと感じるのではないでしょうか。
A:Achievable(達成可能な)
Aは達成可能であることです。これは新人薬剤師の現状を考慮して、「努力すれば達成しうる」目標を設定することを指します。例えば、配属して1日目から服薬指導をさせる薬局は無いと思います。配属後の●ヶ月くらいしたら、のようにおおよその目安があると思います。そのように現実的で達成可能な目標を設定するようにしましょう。
先ほどの服薬指導の例に定量的という要素を加えてみます。
- 処方変更が無く、●剤以下の処方を●月●日に服薬指導ができる
- 処方変更が無く、●剤以下の処方を1週間後には1日に●件できる
- 2週間後には、どのような処方も1日に●件服薬指導できる
- 4週間後には、どのような処方も1日に●件服薬指導できる
情報量が多くなるので1例だけとしました。このようにスモールステップ法の考え方で、段階的な目標設定することも大切です。
R:Related(経営目標に関連した)
Rは経営目標に関連していることです。RをRealistic (現実的)と表現するケースもありますが、今回はRelated(経営目標に関連した)で考えます。経営目標と考えると難しく感じるかもしれませんが、「薬局の目標」と考えるとイメージが湧きやすいでしょうか。
プレアボイド(有害事象の回避)、各種インテリジェントフィーの算定実績、減薬提案件数および採択率など、患者さんに貢献していることの証明となる指標は数多くあります。もし所属する薬局の目標がない、という場合はそれを設定することから始めましょう。
個人の目標と薬局の目標は相互に関係しています。個人の目標の総和が薬局の目標となる、という意味です。次に、薬局の目標と経営目標で考えますと、薬局の目標の総和が経営目標となると言えます。ここまで来ると「Related(経営目標に関連した)」という意味が分かるのではないでしょうか。
少し難しく感じたかもしれませんが、「薬局の目標に関連したものにしましょう」というのが「Related(経営目標に関連した)」です。服薬指導で考えると、服薬指導件数、インテリジェントフィーの算定件数などが該当すると思いますので、それを指標としましょう。
T:Time-bound(時間制約がある)
Tは時間制約(期限設定)があることです。期限がない目標は、いつまでも先延ばしになり、達成されません。また、期限を設定することで、順調に成長できているかを評価できますし、達成できなかったのであればなぜ達成できなかったかを考えることができます。
設定する時には現実的に可能かどうか、という観点も大切です。例えば、「服薬指導を開始する時期」と「服薬指導を1日に20件実施する時期」は異なると思います。新人薬剤師の状況を考慮して、努力すれば達成しうる期限設定することが重要です。
まとめ
今回は目標設定のフレームワークであるSMARTの法則をご紹介しました。このような考え方を知っているかどうかで教育者としてレベルに差が出ると思いますし、計画的に育成することで新人薬剤師を早く成長できると思います。
新人薬剤師を成長するための方法として本記事が参考になれば嬉しく思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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