こんにちは、薬局薬剤師のふぁるくま(@farukumayaku)です。
このブログでは薬剤師の勉強に関する情報を発信しています。
初めて新人薬剤師の教育係を任命されたのですが、何をすればよいかわかりません・・・
本記事では【後輩指導】をテーマに、後輩指導のノウハウをご紹介します。
わたしは管理薬剤師として数多くの新入社員とその教育係(指導役)を見てきました。初めて教育係を担当する場合、「どうやって指導すればいいの?」と悩まれる方が多いように感じます。また、「うまく指導できているな」と感じる方も、「これでいいのかな」と不安になりながら指導されている印象です。
まず、本記事では「初めての新人薬剤師の指導。配属直後にやるべきこと3選。」と題して“配属直後にやるべきこと”をご紹介いたします。
以下のような方を対象に作成しております。
- 初めて新人薬剤師の教育係を任命された。
- 後輩指導の経験が少ないため、指導の仕方を知りたい。
また初めて教育係を担当する方の心構えを知りたい方はこちらをどうぞ。
※10分で読めますので、最後までご覧ください。
最初にやるべき3つのこと
1.目標を決めること(いつまでに何をどれだけ達成するか)。
最初にやるべきことは目標を決めることです。
目標は大事って言うよね。「1年後には1人前になってること」とかだよね。
いいや。もっと項目をブレイクダウンする必要があるし、評価は可能な限り定性的・定量的であるべきだし、期限設定が抜けているよ。例えば「服薬指導は●月●日から開始する」であれば具体的だよね。
研修作りの第一歩は教育目標の分析。
中原 淳,企業内人材育成入門,ダイヤモンド社
目標と言うと中長期的な高い目標を思い描く方もいらっしゃいますが、もっと短期的でシンプルに「どのような業務遂行能力を身に着けるか」という観点で考えてみましょう。例えば、一例として以下のような事項が挙げられるのではないでしょうか。
- 受付対応
- 調剤全般(包装医薬品、水剤、散剤、軟膏、一包化、粉砕)
- 服薬指導
- 最終鑑査
何をいつからできるようになるかを明確にすることで、教える立場からも、学ぶ立場からも同じ目標に向けて進みやすくなりますし、達成することが成功体験を積むことに繋がります。どのように目標設定すればよいかを以下の3段階に分けて考えてみましょう。
- 目標のリストアップ
- 定性的・定量的な目標にする
- 期限を設定する
1-1.目標のリストアップ
皆さんに質問です。これから配属される新入社員が「半年後にできてほしいこと」は何でしょうか?その答えが半年後の目標になります。もし会社で定める目標が無い場合は、これを検討して書き出すことから始めましょう。
なおかつ目標はできる限り具体的な方が良いです。例えば「水剤の調剤」で考えてみましょう。いくつか記載してみます。
- 自分一人で水剤の調剤ができる(混合なし)。
- 自分一人で水剤の調剤ができる(混合あり)。
- 自分一人で水剤の調剤ができる(混合あり、かつ複数Rp)。
- 混合無しの水剤の調剤が●分●秒でできる。
いかがでしょうか。同じ「水剤の調剤」ですが、できる業務がやや異なる印象を持つのではないでしょうか。このように業務をブレイクダウンしていくと、業務の星取表が作成できます※。
※細かくし過ぎると星取表の作成負荷が大きくなるため、適度なサイズ感にとどめておくことをおすすめします。
1-2.定性的・定量的な目標にする
目標は可能な限り、定性的・定量的に評価できる指標にしましょう。すべてを数値で評価することは難しいと思いますが、できる限り数値で評価するべきだと考えます。それは数値で示さなければ目標に達したかどうかが判断できないからです。例えば服薬指導で考えてみましょう。
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば服薬指導ができる
- 処方変更が無く、●剤以下の処方であれば1日に●件の服薬指導ができる
似たような表現ですが、1日に1件できることと、1日に10件できることと、1日に40件できることは異なりますし、達成するべき時期も異なります。先ほど作成した星取表を見直し、定性的・定量的に評価できる指標を入れてみましょう。
1-3.期限を設定する
最後に期限設定です。ここまでに作成した指標を「いつまでに達成するか」を決めましょう。例えば、「服薬指導を開始する時期」と「服薬指導を1日に20件実施する時期」は異なると思います。
期限を設定することで、順調に成長できているかを評価できます。新人薬剤師側の立場で考えると、いま習得するべきなのか、徐々に身に着ければ良いのかが明確になり、不安に感じにくくなります。
2.いつから何を始めるべきか検討すること(研修スケジュールの検討)。
目標と期限が設定できましたので、この差を埋める教育を実施する必要があります。「何をすればその目標を達成できるか」を考え、更にいつから何を始めるべきかを書き出しましょう。
例えば、「服薬指導(処方変更なし、単剤の処方箋)を●月●日に実施する」という目標設定したと仮定します。そこから逆算思考すると、いつから準備を開始するべきか、ロールプレイングの有無(実施回数や処方内容)、医療薬学に関する勉強、など自然とやるべきことが明確になると思います。それが教育計画となります。
一般に教材は「つくること」が一番重要だと思われている。しかし、それは違う。作る前に、ニーズが何かを見極めること、ゴールを見極めることがもっとも重要なのだ。はじめよければそのあとはうまくいく。
中原 淳,企業内人材育成入門,ダイヤモンド社
3.目標達成に向けた資源をリストアップすること。
最後に「どのような資源を使うか」です。
ここでいう資源は物という意味もありますが、時間や人を含めてです。新人薬剤師の教育を一人ですべてやろうと思うと非常に負担が大きいですし、業務の合間に教えるのは大変です。
例えばあらかじめ店舗スタッフに協力してもらい、「毎日、夕方の●時から●分は時間を確保してほしい」や「この業務を自分の代わりに教えてほしい(自分の能力の範疇を超える業務など)」などの手段はいかがでしょうか。また、薬学的な知識を教えるのは大変ですし、限界があるので書籍などを活用して自己学習してもらう方法も良いかもしれません。頻出の処方内容を新人薬剤師に調べてもらうなども有効かもしれません。
ただ、何が最適かは配属されている薬局の環境に左右されると思いますので、うまく調整していただければと思います。
まとめ
いかがでしょうか。今回は「最初にやるべきこと(目標設定・研修スケジュールの検討・資源の活用)」をお伝えしました。
このように「どう成長させるか」を考えることは、論理構造化する力、中長期的に物事を考える力を養うトレーニングになります。教育係の負担は大きいと思いますが、中長期的に考えると自身の成長につながり、努力した分だけリターンがあると思います。
ぜひ正しい知識を身に着け、日々の業務にお役立ていただけますと幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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